宣言
豊かな自然に恵まれた群馬県の町村は、国土や景観の保全はもとより国民生活にとってかけがえのない水や食料を安定的に供給する公益的機能を果たしながら、住民同士が助け合い、地域の伝統・文化を守り、「住民自治の充実自治体」として、住民が生き甲斐と誇りを持てる幸福度の高い理想の自治体への道を着実に歩んでいる。
しかしながら、少子化及び高齢化の急速な同時進行により、農山村地域に所在する町村では、合計特殊出生率は東京などの都市地域に比べ総じて高い水準を維持しながらも、人口減少の克服に向け適切に対処しなければならない状況となっている。
そんな中、昨年5月に意図的な所謂「増田レポート」が発表されて以降、市町村の存続をめぐり、すべてを肯定できない雰囲気が作られつつあるが、町村の公益的機能及び我が国に少なくなった「住民自治の充実自治体」の存続を考慮するならば、一部の町村を切り捨てるような「選択と集中」政策は、あってはならない。
政府においては、地方の創生と人口減少の克服に向け、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」及び「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を閣議決定するとともに、全国すべての市町村が作成する「地方版総合戦略」に対応した新型交付金制度の創設を「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に盛り込んだ。
我々群馬県の町村は、田園回帰の潮流がある状況の中で、「増田レポート」とその目的とする「選択と集中」政策、さらにその先にある住民自治と住民の幸福度を軽視した「道州制」を阻止し、住民の幸福度の高さを維持するため、「自治体消滅の罠」に嵌ることなく、再生可能エネルギーの蓄積や災害時のバックアップ機能など農山村の新たな価値を踏まえて「地方版総合戦略」を作成し、各町村の個性と長所を活かして人口減少の克服を図るとともに、都市と農山村が「共生」しうる社会を構築するため、果敢に行動していくことをここに誓う。
以上、宣言する。
平成27年2月10日
群馬県町村会定期総会
決議
本県町村の多くは、農山村地域にあり、国土や自然環境の保全、食料の安定供給、水資源の涵養、地球温暖化対策に資する森林の整備等に加え、地域の伝統・文化の継承など極めて重要な役割を果たすとともに、大都市へ、特に東京へ優秀な人材を送るなど、貴重な人材供給源として、国の発展に大きく貢献してきた。
こうした中、今、我が国が直面している人口の急減、超高齢化への対応は、国と地方が連携・協力して総力を挙げて取り組むべき国家的課題であり、我々群馬県の町村としても真正面からこの課題に取組む。
国は、人口減少、少子化に対する国全体のグランドデザインを描くとともに、町村が主体的に実施する対策を財政的にも制度的にも支援し、対策の障害となる規制の撤廃、縦割りの弊害の除去及び町村への更なる権限移譲を強力に進めるべきである。
我々は、それぞれの町村の個性に適した雇用の場を創出し、住民の誰もが居場所と出番がある幸福度の高いまちづくり・むらづくりを更に進めるため、自ら知恵を絞り不退転の覚悟を持って、「地方創生」及び人口減少の克服に挑んでいく。政府及び国会議員各位におかれては、我が国の多様な地域社会が健全に存続し、発展するため、下記事項の実現を図るよう、強く要請する。
記
一.人口減少の克服と地方創生を実現するため、国は「選択と集中」政策ではなく、地域間格差の是正に取り組み、全ての地方が自主性・主体性を発揮できるように、地域間のアクセス改善といった社会基盤整備や多子世帯への支援など、ナショナルミニマムとして国が担うべき役割を十分に果たすこと。
一.政府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、地方公共団体が適切な効果検証の仕組みを伴いつつ自主性・主体性を最大限に発揮できるようにするための新型交付金が盛り込まれたが、自由度が高く地方にとって使い勝手のよい仕組みとするとともに、継続的に大胆な規模で地方への財政支援を行うこと。
一.住民自治と住民の幸福度を軽視した道州制は導入しないこと。
一.優良な農地の確保を前提として農地転用の許可権限を市町村へ移譲すること。
一.木材としての活用に加え、木質バイオマス発電、小水力発電等、森林が保持している力を活用するとともに、地球温暖化対策に資する森林を維持管理し雇用の受け皿を整備するため、全国環境森林税を創設すること。
一.子育て世帯における経済的負担の軽減のため、国の制度として子ども医療費の無料化を実施すること。
一.安心して子供を産み育てることができるよう、将来を担う子供の教育に係る親の負担を国費により大幅に軽減すること。
一.TPP交渉に当たっては、国益の堅持と重要5品目等聖域の確保に万全を期すこと。
以上、決議する。
平成27年2月10日
群馬県町村会定期総会