宣言
昨年3月に発生した東日本大震災において、我々はかつてない自然災害の凄まじい脅威に言葉を失った。多くの尊い人命や住居が失われるとともに、被災者の生活基盤は一瞬にして断たれ、ご遺族や被災者の悲しみ、焦燥感、絶望感は計り知れず、今なおその気丈な姿勢に心が痛む。大震災の発生当初、本県町村は被災者の受入れ等の支援行動をいち早く行うことができたが、当該町村の迅速な行動の背景には、被災市町村との日頃からの交流はもとより、行政と住民の近さとともに、地域コミュニティや住民自治の質の高さがある。
都市部に比べ、行政と住民の距離が近く、住民の出番が多い本県の23町村は、住民自治の充実自治体としての矜持を持ち、先人たちが育んできた自然、景観、伝統、地域文化及び地場産業を守り、地域の個性及び価値観を重視し、住民の知恵と力を結集して、住民が生き甲斐と誇りを持てる理想の自治体への道を着実に歩んでいる。
しかしながら、本県町村をはじめ全国の町村は、低迷を続ける経済情勢による税収の減少や少子化等による人口減少及び住民の高齢化並びに地域社会の崩壊を招くTPP参加の問題に直面している。さらに、本県町村においては、東京電力福島第一原子力発電所事故により農業や観光業において今後とも風評被害を受けるおそれがあり、「群馬の町村ブランド」を守るため、迅速に適切に対応しなければならない状況となっている。
我々群馬県の町村長は、このような状況を踏まえ、住民と行政の絆、住民と住民の絆を重視し、「小さいから輝く理想の自治体」としての施策を展開するとともに、大災害等に備え、県外市町村との交流を深めること並びに県内23町村の連携を更に強化し、住民自治及び団体自治充実の前提となる地方交付税の充実強化をはじめTPP参加阻止等の町村及び我が国にとっての重要問題解決のために全力を尽くすことをここに誓う。
以上、宣言する。
平成24年2月10日
群馬県町村会定期総会
決議
本県町村の多くは、農山村地域にあり、これまでも国土や自然環境の保全、食料の安定供給、水資源の涵養、地球温暖化対策に資する森林の整備等に加え、地域の伝統・文化の継承など重要な役割を果たしてきた。こうした公益的機能は、農山村で暮らす人々が、その営みを続けていくことによって維持されるものである。
しかしながら、町村を取り巻く環境は、低迷を続ける経済情勢による税収の減少や少子高齢化等への対応で極めて厳しい状況となっている。さらに、原則として例外なく関税や規制を撤廃するTPPに関する交渉の帰趨によっては、一層深刻な状況となることが懸念されている。
政府の「開国と農業再生の両立」という願望の下、昨年10月にとりまとめられた「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」は、抽象的で、食料自給率の向上並びに食料安全保障及び食料主権を確保できる内容とは到底思えない。そこに掲げられた農地の大規模化等の一律の政策は、大半の農家は排除され、離農が進むことにより耕作放棄地の増加や過疎化が一層進行し、コミュニティや稲作関連の伝統文化も廃れ、地域の崩壊につながるものと確信する。
このような状況の中で、我々群馬県の町村長は、直面する困難な課題に積極果敢に取組み、地域に暮らす住民と次代を担う子や孫たちが、夢を語ることができる希望に満ちた町村づくりに邁進する決意である。我が国の多様な地域社会が健全に存続し、発展するため、政府及び国会議員各位におかれては、下記事項の実現について全力を尽くされるよう要請する。
記
一.地域経済・社会を崩壊させるTPPへは参加しないこと。
一.東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害を含めた損害賠償、放射性物質の除染、被災者・避難者への健康管理・生活支援等は、国の包括的かつ最終的な責任において、早期に行うこと。
一.八ッ場ダムについては、早期に工事を完成させること。
一.住民自治及び団体自治充実の前提となる地方交付税の交付税率を引き上げるとともに、三位一体改革で大幅に削減された地方交付税を復元・増額すること。
一.道州制については、それに伴う基礎自治体の規模拡大により行政と住民の関係の希薄化及び無縁社会化を急速に促進させることが明白であり、導入しないこと。
一.国会議員の定数を半減すること。少なくとも民主党政権公約である「参議院の定数40程度削減、衆議院の比例代表定数80削減」を早期に実現すること。
以上、決議する。
平成24年2月10日
群馬県町村会定期総会