平成19年度本会定期総会における宣言及び決議

宣言

 地方自治法が施行されて60年、平成の世も既に20年目を迎え、戦後の混乱期における祖国復興、その後の経済環境や国際社会情勢が激動する中、地域住民の連帯組織としての役割を担い、歴史と風土に育まれた文化を支えてきた全国の町村は、昭和の大合併で6割7分が、平成の大合併ではさらにその6割9分が消滅した。地域住民にとって民主主義を実感し、地域社会の構成員としての責任をも自覚し得る最も身近な行政主体である町村が減少したということは、日本国憲法に規定する地方自治の本旨でもある「住民自治」が著しく損なわれたことに外ならない。

 さらに、行政効率化の名の下に展開される近年の地方財政圧縮の動きは、町村の存在の否定にまでつながる由々しき事態であり、限界集落の増加に止まらず、消滅集落が日本の地方の至るところに出現することが憂慮される。住む人が居なくなれば、そこに暮らした先人の知恵も土地の文化も途絶えることになる。山紫水明とは、人と自然との関わりの中に存在する私たち日本人の心の風景である。そこには経済効率という概念が入り込む余地はなく、私たち国民が享受している計り知れない恵みがある。

 他方、一局集中がもたらす災害時におけるリスクの大きさを思うとき、その補完機能の確保は国家における危機管理の要諦であり、先の大戦で被災された国民の疎開先として多くの人々を受け入れたのは、経済効率では評価に値しない農山村である。今、その農山村が構造改革の陰で崩壊しようとしている。

 我々町村長は、斯かる事態を断じて看過してはならず、町村の存在意義を広く訴え、国を支える重要な地域社会の担い手としての矜持を失うことなく、自己決定・自己責任により住民が誇る活力漲る町村の建設を目指すことをここに誓う。

 以上、宣言する。

  平成20年2月8日

群馬県町村会定期総会

決議

 今日わが国は、改革に継ぐ改革の奔流に呑み込まれ、特に地方自治の世界では地方交付税の削減による財政引き締めの下で、行政コストの削減や人員削減、職員給与の引き下げ等に翻弄され、本来あるべき行政運営や住民福祉向上のための施策展開にエネルギーを傾注できない状況が続いている。

 また、道路が地域社会を支える重要な社会基盤であるとともに、安全で災害に強い道路の確保が急務であるにも拘らず、道路特定財源の暫定税率の撤廃が議論されており、町村財政は非常に厳しい局面を迎えている。

 我々町村は、現行の地方自治制度の下において、幾度かの変革や財政的な試練を経験して来たが、改革の行く末や町村行政運営展望の不透明さにおいて、今日の状況は、異常な事態である。

 このような状況の中で、我々群馬県の町村長は、単なる一地方自治体の責任者としての立場に止まらず、日本社会の健全な在り方を念頭に地域社会の存続と発展を期すものであり、我が国の多様な地域社会が健全に存続し、発展するため、国政を担われる方々が下記事項に全力を尽くされるよう要請する。

1 地方交付税総額を復元・拡充すること及び地方交付税制度の財源調整・財源保障機能を堅持すること。

2 道路特定財源の暫定税率の延長による現行税率水準を堅持すること。

3 町村が担う多様な地方自治を尊重し、市町村合併を強制しないこと。

 以上、決議する。

  平成20年2月8日

群馬県町村会定期総会

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