広報「群馬自治」連載 おすすめの一冊 第8回目 平成13年7月号

 変革が求められる時代、歴史は動くと云われながらも、具体的動きというものが実感としてなかなか伝わってこなかったように思われますが、史上最高の支持率を背景に動き出した小泉内閣も既に2カ月が経ち、町村を巡る動きも確実に変わろうとする何かが感じられるようになってきました。その「何か」とは聖域なき構造改革という方針が今まで漠然としていたものを明確にする力を持ってきたように思われるからです。

 手本のない時代への突入などといわれ既に数年になりますが、今自分が何処に居て、何処へ向かおうとしているのか目印となる新たな北極星を見つけなければなりません。その手掛かりは様々な所に、多様な形であるように思います。 

 


「大臣」

菅 直人著 岩波新書刊

 今回の「おすすめの一冊」は【「大臣」菅直人著 岩波新書】です。現役の政治家。それも野党の党首も務めた人の本を紹介するというのはなかなか気が引けるものですが、この本からは「イデオロギーを軸に評価判断を下す」というような匂いは感じられません。

 前回は松下圭一さんの本の紹介がありましたが、本書の著者も松下さんの著書の影響を強く受けたとのことです。著者が経験した「大臣」という任務を通じて知り得た様々な事柄が生々しく綴られています。
 
 従来から指摘されている縦割りシステムの弊害や官僚主導型の行政の欠陥など現場の奥深くの実態は、今まで仄聞の範囲でしかなかったものが強い説得力をもって伝わって来ます。

 私たち公務に関わる世界では法律改正或いは新たな立法に迅速な対応が求められることが多く、閣議決定などに敏感になることが少なくありませんが、閣議の実態やその前段に行われる事務次官会議の様子、さらにその前段となる各省庁間の調整などリアルな記述が見られます。そして官僚主導といわれる背景にあるものが、大臣の短期交替という「政」の側の姿勢の問題であると指摘しています。

 地方分権、市町村合併、自治体機能の強化が新世紀の大きなテーマになっておりますが、変革に伴う苦痛を小さく止めるには「変革を求められる」のではなく「自ら変わる」ことが肝要なのかも知れません。(N)