広報「群馬自治」連載 おすすめの一冊 第5回目 平成12年10月号

 この欄に「本」の紹介を始めてから1年がたちました。当初は「本」を紹介するという行為そのものに対する気恥ずかしさと、これを打ち消すためのいささかの勇気が必要でありました。

 

 今では「果たしてこの欄を読んでくれている人がいるのだろうか」といった不安が脳裏をよぎっております。人様に「この本を読め、あの本を読め」などと言える柄ではないことは自覚しているつもりですが、つたなくも「己が信ずる処を人に伝えると云う行為は義に適っている」という自負がなげれば1歩たりとも踏み出すことはできません。

 この欄は、皆様からの「おすすめの一冊」をご紹介することが当初からの目的でもあります。ぜひ、皆様の「心に残る一冊」をお寄せ下さい。


「魂」

落合信彦著  光文社刊

 今回の「おすすめの一冊」は【『魂』落合信彦著 光文社刊】です。

近ごろ、教育制度の在り方についての議論が盛んですが、教育というものを考える時に忘れてならないことは、「なぜ教育は必要なのか」ということではないかと思います。本書は著者の自伝的手法で書かれていますが、至る所に本物の教育を感じさせてくれるエッセンスがちりばめてあります。勉強嫌いな劣等生としての少年期、その時代でも父親から学ぶべきものは的確に学ぶという姿勢があり、青年期には一念発起してアメリカの大学への留学試験に挑戦。これが実を結ぶというサクセス・ストーリーの色合いも感じられますが、本人の資質とは別のところで著者に多大な影響を与えた教育制度、思師となる教授陣の姿勢がこの本に重量感を与えているように思います。

 

遊びながら学ぶのは子供の時だけ。「本物の教育は教える方も教えられる方も命懸け」というのが真の姿であるに違いありません。

 

「真の教育が教えるものは、教えられたすべてのことを忘れ去った後、残っているものである」という最後に記された文章に衝撃を感じます。

 

「魂」という表題の上に小さな文字で「人生に合格するための新・学問のすすめ」とやや遠慮気味に書かれていますが、ここに著者の意図があるようにも思われます。

 

面白く一気に読める一冊であること請け合いです。(N)

 

読後感等をお送りください。