おすすめの一冊 41

日 本 の 難 点
宮台真司著 幻冬舎新書

 政権が交代しましたが、今回の総選挙の歴史的意義は、各党がマニフェストに掲げた「国と地方の協議の場の法制化」による意思決定方法の変更とともに、前回の「郵政選挙」で信任された米国により推し進められてきた構造改革が主権者である国民によって否定されたということだと思います。この2点は、我が国にとって、明治維新、終戦に続く第3のターニングポイントになるかもしれません。全国町村会の再三の意思表明や要請にもかかわらず、経済界や一部の人気知事の意見のみを重視して、今後の構造改革の目玉として、国民の生活実感からかけ離れた道州制をマニフェストに掲げた自民党。現行の都道府県制を維持するとした民主党。今回の選挙により、国政においても、国民に最も近い行政主体である市町村の意見の重要さを改めて認識させられたところです。

 今回のお薦めの一冊は、『日本の難点』宮台真司著(幻冬舎新書)です。著者の宮台氏は首都大学東京の教授で出演のラジオ番組でクレーム覚悟の胸の空く意見を述べる社会学者です。宮台氏にとっては初の新書ですが、我が国で共有されつつある課題意識をより一層急速に共有化すべくコミュニケーション論・メディア論、若者論・教育論、幸福論、米国論、日本論など全部で42の日本の論点を処方箋付きで述べています。

 我が国は、1980年代末期から農産物自由化問題に始まり、年次改革要望書により大規模店舗規制法の緩和や建築基準法の緩和など、米国資本に市場を開くことを目的とした政策的変更が行われています。学校完全週休二日制や郵政民営化をはじめ今年スタートした裁判員制度も米国資本へ有利になるよう米国が我が国へ非対称的に要望してきたものです。宮台氏は、それらの米国からの構造改革の要求に応じたことにより日本の「生活世界」の相互扶助で調達されてきた便益が、流通業という「システム」にすっかり置き換えられ、その結果として日本社会が包摂性を失い、国家と国民が疲弊した、空洞化したと説きます。

 そして、「アメリカに守ってもらうために、対米追従は仕方がないのか」という誰もが議論を避けてきた難題についても、具体的な処方箋を提示しています。課題を指摘するだけの学者や評論家が多い中で、日本社会の病巣と処方箋を提示した宮台氏に感心するとともに、日本人の幸福度の向上にとって、「生活世界」の相互扶助の復活が必要であることを認識させられた次第です。(U)