おすすめの一冊 38

代 表 的 日 本 人
内村鑑三著 鈴木範久訳 岩波文庫

 年末の喧喋は静かに厳かに新年を迎えるためにあるように思います。
 昨秋あたりから世界を包む不穏な雲行きに心配を募らせる人も多いに違いありませんが、やはり元旦は私たち日本人にとって一年の幸せを願い心の安らぎとバランスを育む時でもあります。
 神社仏閣をわたり歩き各方.面の神仏にお願いすると、気持ちが落ち着くというのも日本人の特権かもしれません。
 先の見えない混迷の世の中。せめて新年くらいはささやかな希望め夢を膨らませたいものです。

 今回の「おすすめの一冊」は【「代表的日本人」内村鑑三著・岩波文庫・六百円+税】です。
 群馬県に生まれ育った者なら誰でも知っている人。「上毛かるた」の「こころの灯台…」、小学生でも知っている内村鑑三の著書です。
 政治、経済さまざまな分野で混迷や行き詰まりに喘ぐ昨今ですが、近代日本の黎明と言うべき明治維新のころもまさに混沌の時代であったに違いありません。しかし、その時代に世界に羽ばたき活躍された人も少なくありませんでした。新渡戸稲造博士によって英文で書かれた「武士道」が世界の人々に日本人の道徳観の高さを紹介し、東洋の小国の名を知らしめたことはあまりにも有名ですが、その新渡戸博士と札幌農学校で同時代を共にした内村鑑三も英文で「代表的日本人」を著しました。

 彼のケネディ大統領が最も尊敬する日本人として上杉鷹山をあげられたと言うことですが、内村鑑三もまた日本を世界に紹介し後進国日本が世界に伍して行くために尽くされた人でありました。

 この本は今から100年前に書かれており登場人物は当然それ以前に生きた人。西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人です。
 何れも歴史上の有名人ですので皆さんも何らかの形でそれぞれにイメージをお持ちのことと思いますが、著者も多くの資料をもとに5人の人となりを描き出しています。登場人物が人物だけに、座右の銘とすべき言葉の宝庫のような一冊でもありますので是非ご確認下さい。
 今、日本では政治家や行政担当者そして経済界を担う人々の挙措に不信を募らせる国民が少なくありません。国民の指導者たる真のリーダー不在に世の中が深い闇から抜け出せずにいるのかも知れません。
 今と昔と何が違うのかと言えば、まず物質文明の進歩が上げられますが、人間の質もこの本に登場するような超人は別としても今の私たちと昔の日本人は明らかに違います。
 その違いを見つけ学び実践することが今の私たちには必要です。本物は時代を越えて人の心に感銘を与え続けてくれます。生きる姿勢を学び「道しるべ」としたいものです。(N)