おすすめの一冊 30

こ の 国 の 終 わ り
林 秀彦著 成甲書房刊

 ♪ 君の行く道は 果てしなく遠い なのに何故 歯を食い縛り 君は行くのか そんなにしてまで♪
 これは、今回の「おすすめ」の著者が脚本を書いた、今から40年前のテレビドラマ「若者たち」(後に映画化)の主題歌の一節です。
 この時代に青春を送られた人には懐かしく蘇るものがあると思いますが、人々には信頼も安心もあり、貧しくとも夢の持てる時代でした。
 今も歯を食い縛って頑張っている人は沢山おられますが、未来に光を感じている人は何人いるのでしょうか。
 今までの施策の検証と真に目指すべき方向の確認が急がれます。

 今回の「おすすめの一冊」は【「この国の終わり」林秀彦著・成甲書房刊・1,800円+税】です。
 ここ数年、さまざまな面で日本の制度やシステムが激しく動きましたが、その成果を実感している人はどれ程いるでしょうか。
 むしろ今日、「いじめ」により子供たちが自らの命を断つという悲劇や日常化している凶悪事件、社会の指導的立場に在る者の無責任極まる行動など日本社会の秩序の崩壊ぶりは絶望的な様相を呈しています。

 なぜこうなったのか。本書はその根源の解明に迫ります。 日本社会の歪みは昭和20年の敗戦を境にそれまでの価値観の大転換に起因するとも言われますが、実際には今から100年も前に書かれた「シオンの議定書」というシナリオに沿って実行されていると言います。
 本の表題が示すとおり、危機感と緊迫感に立ちすくむ思いもいたしますが、バブル経済崩壊以来、国際化・グローバル社会化という流れの中で地に足のつかないままに変化の波に押し流された結果のように思われます。

 「合理的」という一つの判断基準にしても彼の国の合理とわが国の合理は捉え方が異なり「損得の合理主義は、日本では合理でもなんでもなく、建ち上がったときのいい家が合理であり、食べたときのおいしい米が合理なのである」とのこと。しかしこの価値観が揺れているのです。
 日本が抱える問題の核心は競争原理、効率至上主義、行き過ぎた自由など様々な要因がありますが、イメージで物事が動き、理想を求めるエネルギーが減退していることであり、政治も行政もマスコミもそれぞれに国を担うべき背骨が脆くなり支持率、民意、視聴率といった、常に揺れ動く人の心に振り回されていることではないかと思います。
 【「奪われる日本」関岡 英之著・講談社現代新書】も併せてお読みいただくことをお薦めします。(N)