広報「群馬自治」連載 おすすめの一冊 第3回目 平成12年4月号
 4月は旅立ちの季節です。学校も職場も又それ以外の処でも、希望に満ち溢れた人、失意の人など、4月はまた喜怒哀楽の渦巻く季節でもあります。

 世の不条理と闘いながら一所懸命頑張ろうとしている人々への応援歌とも云うべき不朽の名著を今回はご紹介します。

 私事になりますが、迷える青春真っ只中の頃、「座右の書」にしていたものですが、ふと立ち寄った書店で懐かしさに誘われて手にしました。

 作者の年齢が現在の私の年齢と同じであったことを知りました。

 人間には違いがあります。見掛けは同じようでも「質」が違います。

 本との出会い、殊に「良書」との出会いは「良質な人、高潔な人格」に触れることでもあります。


「人 生 論」

武者小路実篤著  岩波新書

 「おすすめの一冊」は【「人生論」武者小路実篤著岩波新書】です。

 この本は昭和13年に出されたものであり、初刊以来62年もの間、書店の棚を占拠しているロングセラーであります。今更ご紹介するまでもなく、既に多くの方が読まれているものと察しますが、もう一度新鮮な響きを心に共鳴させて戴きたいと思います。

 30余年の歳月を経て改めて読み直し、一番に感じたことは、本物はいつの時代も変わることなく生き続けるということでした。

 第二次世界大戦を境に、様々なシステムの変革がもたらされた激動の二十世紀の中で最も変化の著しい60余年間という歳月を越えて、全く違和感のない新たな衝撃を受けたということでした。

 社会のあり方、教育のあり方、人間の生き方が間われる今日、やはり「原点はここだ」という指針を読者に示してくれるに違いありません。

 「全世界の人間が天命を全うできる世の中」を理想とした著者が「日向新しき村」建設の実践を経て健康、愛、道徳、美、そして生と死について熱く語る珠玉の随筆がこの「人生論」です。

 「人間はどのように生きるべきか」ということを根底に据え、大人へ導くためのものが教育であるならば、学校の補助教材として是非採り入れて頂きたい一冊でもあります。(N)