おすすめの一冊 62

里山を食いものにしよう 原価0円の暮らし
和田芳治著 阪急コミュニケーションズ

 藻谷浩介氏は、里山で暮らす人々が、都会の人よりはるかに豊かな生活を送っていることを各地で実感し、里山に住む人々が生きていくのに必要な大切な資源を生かしていることを「里山資本主義」と表現した。今、お金では換算できない里山の価値が見直されている。

 今回ご紹介する本は、和田芳治 著「里山を食いものにしよう 原価0円の暮らし」((株)阪急コミュニケーションズ)。
 著者の和田芳治氏は、藻谷氏の本の中にも登場する里山資本主義を実践されている方で、本のタイトルにもあるように、里山を食いものにしている人である。「食いものにする」というと悪いイメージが浮かぶが、実際、自宅で営んでいる「○食処和み亭(わしょくどころなごみてい)」(料理担当は奥様で、和田さんはもっぱらしゃべりすぎのサービス係担当とのこと)では、いわゆる地のものを使って里山にあるものを食いものにもしており、また、木を燃料とするエコストーブでご飯を炊くなど、おおいに里山を活用し、「里山を食いもの」にしている。

 役場の職員から教育長も務められた和田さんは、地元を元気にし、盛り上げようと今も奮闘されている。大変なご苦労をされてきたと思うが、根底にあるのはそこで生きることを楽しもうとしていることだ。この本の表紙の裏に「逆境を嘆いたり、親や人のせい、あるいは社会や政治のせいにするのではなく、『面白がればなんだって面白い』の精神でいこう!」と書かれている。まさにこの言葉が、和田さんのパワーの源のような気がする。
 「人を変えることはそう簡単ではありませんが、私を変えることは私にはできます。そして、人を変える近道は、『私が変わる。私が変える』それが『拡命』です。」と述べている(『拡命』は和田さんの造語)。自ら率先して、体当たりでぶつかっていくことで活路を見出しているバイタリティー溢れる人だ。
 将来の人口減少がクローズアップされている中、町村部から都市部へさらに人の移動が加速すると、里山の集落の存続にも大きな影響を及ぼすことになる。
 和田さんは本の最後で、里人(和田さんは「さともり」と読ませている)にならないかと呼びかけている。
 豊かな暮らしとは、どんな暮らしのことを言うのだろう。金銭的に恵まれ何不自由なく必要なものが手に入れば、それで豊かな暮らしに近づくことができるのかも知れない。しかし、この本を読むと、和田さんの里山での生活をほんの一部分ではあるが垣間見ることができ、人生を楽しく生きようと努力している和田さんが輝いて見え、豊かな暮らしをしている人だと思えるのは私だけではないだろう。(M)