おすすめの一冊 57

『 東 京 独 立 共 和 国 』
水木 楊著 文藝春秋

 政府の要請による地方公務員の給与削減については、多くの団体で実施、あるいはこれから実施すると思われる。この要請を受け入れたところは、納得はしていないが、地方交付税を削減され、苦渋の選択を迫られた末の結論であることは言うまでもない。
 地方分権と声高に叫び、権限移譲が進む中、まさに中央集権と呼ぶにふさわしい国からの押し付けは、真の意味での地方分権に辿り着くには、まだまだ遠い道程であると感じた。

 今回ご紹介する本は、水木楊著「東京独立共和国」((株)文藝春秋)です。この本は14年前の1999年の発刊ですが、斬新な?題名が目につき、思わず手に取りました。
 題名のとおり東京が日本から独立するという話です。なぜ独立なのかというと、東京が国へ納めた税金が、地方交付税や補助金として地方へ流れて行き、箱モノ行政などに無駄遣いされているという不満があり、見返りが少ないこと。さらに、東京が神奈川、千葉、埼玉の3県に呼びかけ、政府に共同提案した@公務員と国会議員数を10年間で半減する。A国の仕事は国防、外交など、ごく限られたものにする。B教育制度は地方が自分のアイディアで作ることにする。地方によっては6・3・3制が5・4・3制でもいい。C今後10年で「1票の格差」を2分の1以内に、20年で限りなく1に近づけるべく、選挙区の定数を是正する。D所得税と住民税、法人税と法人事業税・都民税をそれぞれ一本化して地方税にし、自治体が自由に使える財源とする。E国が地方に与えている補助金と交付税を全部廃止する。という共同提案を「非現実的」として退けたため、業を煮やした東京都知事が用意周到に準備し、東京独立を宣言する。

 この物語では日本の首都機能が中部日本に移転した後の話なので、日本国の中枢と東京という地域が重なることはないが、日本国とすれば、東京が勝手に日本国から独立するというのは、到底受け入れられない。それに加え、東京は埼玉、千葉、神奈川など他県へも連邦への参加を働きかけようと画策するため、日本国としては何としても独立を阻止したい。劇画的なストーリー展開にあまり現実味を感じられないかもしれないが、この秋にも法案が提出されるかもしれない、道州制の行く末を見ているような錯覚にとらわれた。
 現に道州制に対する懸念の声の中には、@都府県の廃止(合併)によって州を設置すると、州都とその周辺の声ばかりが重視され、合併で行政権を失った地域の声が軽視される。A強大な権限を持った道州知事が中央政府の意向に従わない可能性がある。B財政の弱い自治体同士が合併しても、財政が強くなるわけではない。道州制は財政的にみると、自立性が高まるのは南関東など一部だけ。強いところはもっと強くなり、弱いところはさらに弱くなる。C「地方分権」のかけ声とは裏腹に、上からの道州制推進は中央集権的な体制の再編強化につながる恐れがある。といったように、道州制に否定的な声は少なくない。
 この本では、結局、ほとんどの道府県で日本国からの独立を問う住民投票が行われ、独立を決定する。日本は連邦組織に移行し、国の権限は大幅に縮小、外交、防衛などごく限られた仕事を各共和国から委託されることになる。各共和国はそのGDP(国内総生産)に基づいて資金を拠出、国家の運営に当てることになる。これを、人々は逆補助金と呼んだ。と書かれている。
 道州制は地方分権を進めるかも知れないが、その代償は計り知れない。(M)