おすすめの一冊 55

『誇りについて −黒澤丈夫の遺訓−』
上毛新聞社編 上野村発行

 群馬県全体の投票率が57%であった昨年12月16日執行の第46回衆議院議員総選挙において、上野村は81%という県内最高の投票率を記録しました。小さいからこそ輝く理想の自治体を目指す上野村の面目躍如といったところです。「栄光ある上野村の建設」を目標に、支え合い協力し合う社会道徳や住民の連帯意識・自治意識を最重視された泉下の黒澤村長も誇りに思っているのではないでしょうか。そんな折、上毛新聞社論説委員長の藤井浩氏が著した『誇りについて −黒澤丈夫の遺訓−』(上野村発行)を同村からいただきました。黒澤村長の生涯と功績を綴ったもので、これからの上野村の発展のため村内の全世帯へ配られたものです。今後、上毛新聞社から発行され書店で販売される予定だと伺っております。

 第5章中「自治の根本を問う」の節において、平成13年11月30日に群馬会館で開催された総務省主催の市町村合併推進のためのシンポジウムにおける黒澤村長の発言の記載があります。合併は善、合併を推進すべきという会場の空気の中で、私も黒澤村長の地方自治史に残る自治の根本論を聞きました。「私は市町村合併に関しては極めて慎重論者です。地方自治体というものは憲法で保障された自治を実行するために存在する国家の底辺にある社会です。この法制社会は単純に今の形になったのではありません。合併するということは、その地域住民の自治権を薄めることであります。1万人の町の住民が10万人のところへ行けば、自分たちの自治権は10分の1に減る。そこに着目すれば、慎重の上にも慎重に考えるべきことであると思います。自治体が大きくなればなるほど、住民がその自治体を自ら支えているという意識、自治意識が薄まります。それは、そのまま団結心の乏しい国家につながっていきます。」

 今回の衆議院総選挙において、県内12市の平均投票率は56%、23町村のそれは62%でした。留意すべきは、平成の合併で合併前の旧市と合併した旧町村地域の投票率の低さです。旧町村地域の平均投票率は54%で、旧市(一部旧町村を含む。)の57%よりも低く、現在の23町村のどの町村の投票率よりも低くなってしまいました。旧町村地域については、国や県が推進した合併により住民の自治意識が薄まったと言えます。さらに、旧町村地域の住民の自治意識を維持させるための法制度上の仕組みとしての地域審議会等が約束どおり機能しているのか疑問です。住民の自治意識が高い「自治」の組織を人為的には作れないということです。

 道州制基本法案が国会へ提出されようとしています。事務処理能力を基準に市町村を人為的に再編して基礎自治体を作っても、決して住民の自治意識が高い「自治体」にはなりません。道州制は、画一的な「事務処理他治体」を作り出すだけであり、自治の根本を忘れた暴論であると言わざるを得ません。私にとって地方自治のバイブルとなった本書を熟読し、そう確信しました。(U)