おすすめの一冊 25

次 に く る 波
浅井 隆著  PHP研究所刊

 「和を以て貴しと為す」という十七条憲法に記された言葉は日本人の遺伝子に組み込まれた価値観のように思われます。聖徳太子がこの言葉を残した時代もまた内政外交に神経を使う今日の状況に似ていたのかも知れません。20年前に聖徳太子の肖像が1万円札から消えた頃から日本という国は大きくその姿を変えて来ました。
 高度経済成長もピークに達し「対米貿易黒字が拡大する一方、日本の市場は閉鎖的である」との理由で米国議会でジャパン・バッシングが起きたのです。そして日本は国債発行をしてまで内需拡大を推し進め、競争原理をベースにした市場解放実施の道を辿って来ました。

 今回の「おすすめの一冊」は【「次にくる波」浅井隆著・PHP研究所刊・@1,600円+税】です。
 国を挙げて構造改革一色の日本の現状ですが、その原因はすべて「金」です。国と地方が抱える借金は500、700、900兆円とみるみるうちに膨らみ、現在では公共機関の負債総額は1,100兆円ということです。
 「この負債が近い将来、我が国に重大な危機をもたらす」というのが本書の中心テーマです。円が暴落し、金利が上昇し、極度のインフレに陥るというあまりにもショッキングな内容に驚かされます。
 著者は過去に「銀行は倒産しない」と言われていたとき、金融機関の破綻を予測したと言いますが、果たして本書のとおり「富裕層と貧困層の二極化」が進み、圧倒的多数が貧困層に沈むという事態が来るのか、多くの人は今の時点では想像もつかないものと思われます。

 しかし、かつてのソ連やメキシコの実例を交えた分析を見せられると近い将来、この国が大パニックに襲われるような恐怖の事態もあながち絵空事でもないような気持ちになってしまいます。
 国の信用力が低下し、強烈なインフレが起こるのか。消費税の引き上げなど、大増税が行われるのか。デノミネーションや預金封鎖といった事態が起こるのか、何れにせよ私たち国民は借金の付けを払わなければならない状況に迫られつつあるように思われます。

 小泉総理が最大の政治課題に位置付けていた「郵政民営化法案」が参議院で否決されたのを機に衆議院解散総選挙という事態も起きました。
 民主主義社会において私たち国民の判断が国家の善し悪しを決めることになる訳です。その真価を発揮するためにも、本気で政治と向き合わなければならない時を迎えていることだけは確かなようです。(N)