おすすめの一冊 50

『 反TPPの農業再建論
田代洋一著 筑波書房

 果たして「防衛での貸しは経済で返される」ということのようです。土や天候等の自然条件と格闘しながら国民の命と国土を支えている全国の農業者の意見を蔑ろにし、野田首相はTPP交渉への参加を決めました。暗雲たちこめる状況の中で、町村はTPP参加反対運動を続けながら、今後予想される事態へしなやかに対応できるよう地域農業と国土(美しい日本の田園風景)を守るための「準備」も同時に進めなければなりません。

 今回のおすすめの一冊は、『反TPPの農業再建論』田代洋一著(筑波書房)です。著者の田代氏は、元農林水産省職員、現在は大妻女子大学社会情報学部教授、平成23年4月号のこの欄で紹介した『TPP反対の大義』の著者の一人でもあります。本書は、@日本農業は過保護か、A政権交代と政局農政、B直接支払い政策の本質、CTPPと国民生活・経済・農業、D民主党・行政刷新会議と農協、E「攻めの農業」論の欺瞞及びF農業再建の政策課題の七つの章で構成されています。

 第1章から第6章までは、21世紀に入ってからの我が国の農政を概観し、農業再建のためにどういう政策を講じてはならないかという過去の政策の反省に立った否定形において問題点を指摘しています。特に、第6章については、「開国と農業再生の両立」という願望の柱として提起された「攻めの農業」、「攻めの担い手」等の「攻め」の欺瞞性、目くらまし、論点外しが鮮やかに批判されています。そして、最後の第7章において、それらの批判を踏まえて積極的にどういう政策を講じるべきかを具体的に提言しています。

 私は、本書を読む以前には、農業再生策としての大規模化や株式会社の農業参入化、さらに死んでいない農業に「再生」というまやかしの表現を使う国の政策に何となく疑問を感じていました。本書を読み、「規模の経済」が働く土地利用型農業(米・麦・大豆・土地利用型畜産等)の規模拡大は経済合理性がありそれを促進すべきであるが、「規模の経済」があまり働かない非土地利用型農業(野菜・果樹の一部・有機農業・直売所向け農業・高齢農業・兼業農業等)には規模拡大は有効ではないということをはじめ漠然としていた多くの疑問が整理できました。TPPや農政の問題点を勉強したい方、さらに地域農業と国土を守るために、国の政策とは違うベクトルのこれからの自治体農政の「準備」を進める方に本書を推奨いたします。(U)