おすすめの一冊 22

希望格差社会−負け組の絶望感が日本を引き裂く−
山田昌弘著 筑摩書房刊

 昨年は度重なる大型台風の日本列島上陸や新潟県中越地震の発生など自然の脅威に翻弄され、多くの人々が路頭に迷い将来への不安を抱かざるを得ない情況に追い込まれました。
 また自然現象とは別に、日本人の生活や未来への展望についても「安心」や「希望」といったものが失われつつあるようにも思われます。
 様々な改革が叫ばれておりますが、努力や苦労の割りには、その行き先に光りを感じられないからかも知れません。
 それでも「希望」は欠いてはならない私たちのエネルギー源なのです。

 今回の「おすすめの一冊」は【「希望格差社会―負け組の絶望感が日本を引き裂く―」山田昌弘著・筑摩書房刊・@千九百円+税】です。
「希望に満ちた新春」と言いたいところですが、作家の村上龍氏が言うように「この国には何でもあるけど、希望だけがない」ような閉塞感に覆われているように思われます。その理由を様々な事例や社会現象から解析しているのが本書です。

 高度経済成長期には「一億総中流」と言われながらも、努力さえすれば必ず報われるといった確率の高い可能性がありました。ところが現代は将来への展望が開けず、銀行や大企業の倒産、合理化に伴うリストラに加えフリーターや失業者の増加、毎年三万人を超える自殺者など様々な処で社会の不安定要因が増幅されています。
 「揺り籠から墓場まで」という言葉に象徴されるように、進化した社会とは人々が安心して暮らせる社会の構築であった筈ですが、今や日本は生活のあらゆる領域にリスクが拡がり様々な分野で勝者と敗者の格差が拡大に向かう二極化が進む、「希望格差社会」になったと云われます。

 曰く『希望の問題は、個人だけの問題ではなく、社会全体の「活力」や「健全さ」そして、「社会秩序」に関わってくる。そして、希望を持つ人が多い社会は発展し、活力がみなぎるだろう。一方、絶望する人が多い社会は、停滞し、堕落し、「社会秩序」が保てなくなるだろう。』
 今、日本の小さな町や村の中には市町村合併の嵐に揉まれながらも「自立のための自律」を決意し敢えて困難に立ち向かっている所も少なくありませんが、こうした思いを衝き動かすエネルギー源こそ「希望」という二文字なのかも知れません。(N)