おすすめの一冊O

内 蔵 が 生 み 出 す 心

西原克成 NHKブックス

 世の中の景気が悪くなったり、日常生活が過度に忙しくなったりすると心に余裕がなくなり物事がギクシャクしてくることがよくあります。
 曾てはユックリズムと言う言葉が流行りましたが、この頃ではスローライフなどと盛んに言われるようになりました。
 「物の豊かさよりも心の豊かさを」と言われ久しくなります。
 昨今の社会環境は人間も他の生き物も苛酷に過ぎるのかも知れません。
 大人も子供も皆忙しい忙しいと嘆きつつも忙しいのが当たり前の世に私たちは暮らしています。「忙」とは「心を亡くすこと」とも言われます。
 「こころ」と言えば人それぞれに連想するものがあろうかと思いますが、「優しいこころ」や「強靭な精神」とは一体何処から生まれるのでしょう。

 今回の「おすすめの一冊」は【「内蔵が生み出す心」西原克成著.NHKブックス.@920円+税】です。
 高等動物の始まりは、まず腸が発生しそれから複雑な体制ができるといわれ、私たちの顔は生命を代表する複合器官であり、その源は鰓のある口の袋状の生物、海鞘(ホヤ)とのことです。そして「腸」は高等生命体の源の器官であり腸管の総体に「心」が宿り財、名、色、食、睡の欲の源が存在するといいます。心は心臓にあり精神は脳にあり、顔は心と精神を同時に表し、この表情が人格の現れになる訳です。
 人の人としての最大の特徴は言葉であり、これは舌と口腔の使い方の工夫によるもので、これにより脳が飛躍的に発達するといいます。
 「背に腹は代えられない」という言葉がありますが、背筋のリズム運動が精神思考を発生し腸官の蠕動リズム運動が心を発生する。そして心は本能、精神は理性とみればこの両者は相容れないことが多くなる訳です。
 身体のバランスの崩れが病に至ることは素人でもそれなりに承知しているものですが、本書で説き明かされる医学的対処法には「目から鱗」の感慨があります。本の性質上医学的、専門的な表現が含まれ難解な記述もありますが、この心や精神を医学的見地から捉るとともに、実際の症例や武士道まで話がおよび本の厚さ(235頁)以上に厚みを感じます。
 読んで良かったと思うこと請け合いです。(N)