広報「群馬自治」連載 おすすめの一冊 第10回目 平成14年1月号

 我が国は、ここ10年間、景気回復を優先するか、財政再建を優先するか様々な議論を繰り広げ、その都度諸外国の政策を無批判に取り入れようとしてきました。その結果が現在の状況です。これは、我が国がどのような国を目指すべきかという「約束の地」の議論がないままに、景気回復や財政再建を議論してきたことが原因となっているわけです。
 今、進行している「痛みを伴う構造改革」については、市町村合併もそのプログラムに組み込まれており、市町村はまなじりを決して議論しなければなりませんが、その前に重要なことがあります。「約束の地」を議論することです。構造改革が目指す「知恵を出し努力した国民だけが報われる社会」でよいのでしょうか。


『二兎を得る経済学 景気回復と財政再建

神野直彦著 講談社+α新書刊

 今回のおすすめの一冊は、神野直彦教授(東京大学大学院経済学研究科)著の『二兎を得る経済学 景気回復と財政再建』です。
 前回の『「希望の島」への改革』に引き続き、神野先生の最新の著書ですが、本書を読まれた複数の町村長から推薦をいただきました。さらに、今年が、構造改革や国から地方への税源移譲、或いは市町村合併の議論を深めなければならない市町村にとって非常に重要な年となる予感がしますので、お薦めする次第です。
 本書のキーワードは「学び」です。神野先生は、人間は市場という偶像の前に平伏してはならない。人間は人間の可能性を信じ、「学び」によって自己を高め、未来を市場の神に委ねるのではなく、人間の尊厳のもとに取り戻さなければならない。そして、国民が知恵と勇気を絞り、スウェーデンを越える「学びの社会」を実現できれば、「二兎を追い二兎を得る」と説きます。
 私たち日本人が「協力社会」を築き、「学びの社会」を形成するためには、地方政府の役割が非常に重要になってきますので、多くの市町村関係者がお読みくださるよう念願します。(U)