今 こ そ が 飛 躍 の チ ャ ン ス 

〜田園観光エリアへ〜

中之条町長 入内島 道 隆    

さよなら金太郎
 金太郎飴的な行政が行き詰まり、地域間競争が激化していく中で、いかに差別化をはかり、地域を活性化するかが今後の地方自治の決め手になってきます。自分の地域のアドバンテージをどれだけ生かしたまちづくりができるかが、非常に重要になってきます。他のマネも時には必要かもしれませんが、マネは所詮マネでしかありません。わが中之条町のアドバンテージが何かを見極めて、それを生かしたまちづくりが地域間競争に勝ち残るスタートとなるのでしょう。

東京ディズニーランド
 中之条町は典型的な中山間地域で、過疎が進行し、今後も人口の増加は見込めません。したがって、人口が増加したのと同じ効果を模索するしかないのです。交流人口で定住人口の減少分をカバーして地域経済を活性化していこうという方法は、いまや定番となっている地域の活性化策であります。
 日本で一番成功している交流人口活性化事業は、東京ディズニーランドだと思います。こういっては失礼ですが、千葉の田舎の漁港にディズニーランドを造っても、お客が来るとは当時だれも思わなかったでしょうし、誰もが日本には合わないと思っていたでしょう。だいいち、千葉なのに東京ディズニーランドと言うのも、嘘である。しかし、現実としてこれほど成功しているテーマパークは、世界中探してもないでしょう。いまや、世界の東京ディズニーランドであります。人口14万の浦安市がこれほどの発展を遂げる「からくり」は、交流人口の活用にあるのです。

マーケットの拡大は交流人口で
 中之条町は18,000人弱の人口しかありませんが、交流人口をターゲットにすれば、消費は無限に広がる。というか、交流人口ゆえに定数にあて込む事ができないのです。
 そして、首都圏をマーケットにして地域戦略を考えたとき、どうすれば交流人口を呼び込み、消費行動を起こさせ、地域経済を底上げするかが命題になってきます。素材は揃っています。四万温泉、沢渡温泉、薬王園、嵩山、伊参スタジオ、白久保のお茶講、日本一のもみの木、などなど数え上げればきりがありません。問題はいかにこれら素材を生かしたまちづくりを行うか、他との差別化の中で、と言うことです。

考える青年部
 私が四万温泉協会の青年部長になったとき「考える青年部」と言うテーマを打ち出しました。当時、青年部は人足部隊であり、頭を使う必要はなく言われた事を素直にやっていればよかったのです。しかし、一番血気盛んな青年部時代に将来どういった温泉地にするかを考えないで、いつやるのか、と言う思いから「考える青年部」を主張しました。さらに、ヤル気のある仲間がいたことから、四万温泉の逆襲が始まったと思っています。
 あれから5年、今では各地から視察に来たり、青年部のメンバーが講師として各地に呼ばれたりするまでになりました。当時では考えられなかった事です。
 そして、成功の原動力を一言で言うなら「共有知」でしょうか。お互いの考え・知識を共有する事で後戻りのない体制が作られたのではないかと思っています。

職員のヤル気
 それが温泉地であれ、行政であれ、大差はないと思うのです。きちっとした考えを持って取り組む事で、必ず動き出すと思っています。幸いにも、中之条町という大きな船も、水しぶきをあげ動き出そうとしています。役場には議員時代も含めて出入りはしていたのですが、職員の個々の能力までは良く分かっていませんでした。
 しかし、町長となり接していく中でいわゆる「役人」といわれ、お茶を飲み新聞を読んでいるという職員はいないどころか、ヤル気のある職員が大勢いることには正直驚きました。一例を挙げれば、就任日に「案内所コーナー」の設置を依頼しました。「役場に来たが、どこに行けば自分の用が足りるのか分からない」と言う声を聞いていたからです。夕方にはデスクを組み立て終わり、「これでどうですか?」と言われ感動しました。「うるさい町長が就任してきた。適当にやろう」と思えばこんなに早い対応をする必要はないのです。また、この「案内所コーナー」は、現在の人員で各自が時間を生み出して案内業務を行ってほしい、ということも付け加えてあったのですが、3日でシフトを組み終わり、翌週から稼動していたことにも驚かされました。

ボランティアの力
 経済活性化プロジェクトでは5つの部会を立ち上げ、町の活性化に取り組んでいます。役場の職員にも参加を呼びかけました。ただし、仕事を離れてボランティアで、と言う希望をつけたのです。自分の持ち場の仕事をこなし、なおかつ無給での参加です。おそらく参加者は少ないだろうと考えていましたが、意外と多かったのです。また、参加しないまでも今の仕事が落ち着けば参加したい、と言う声も聞かれました。
 一般町民からのボランティアとともに、対等の立場でこのプロジェクトを盛り上げています。お互い無報酬で達成感を追い求めている姿に、本当に感謝しています。これで町が良くならないはずはない、とすら感じています。何しろ、プロジェクトに参加しているボランティアは、50名を優に超えています。毎週会議があって本当に大変ですが、素晴らしい協力体制ができています。
 駅前での「ふるさと市」や「日本一のもみの木でのクリスマスツリー」などアイデアも素晴らしいです。また、聞く耳センターも立ち上がりました。こちらも100%ボランティアで稼動しています。こう考えると、私は多くの人に支えられている事をつくづく感じます。

実行あるのみ
 中之条町の町長になってまだ日が浅いから、見えてない部分が相当ある事も事実ですが、逆に見えすぎると、何もできないと言う事もあるものです。歴代の首相を見てもそれが言えるのではないでしょうか。M総理などはその典型だと思います。私などは、概略が見えていれば、それで充分だと思っています。所詮人間です。パーフェクトなんてありえないのです。頼りになる職員もいますし、自分の思った事を実行していくのみです。結果が出せなければ、町民が幕引きをしてくれるでしょう。

スピーディ?あわてている?
 私の考える行政は、常識的な行政手法からみると大分違っているのかもしれません。自分では「スピーディ」と思っていても、見方を変えれば「あわてている」「急ぎすぎ」とも映るのでしょう。だから、「若いやつは危なっかしい」と言う事になります。もっともだと思います。しかし、高校時代に読んだ本に、このような言葉がありました。「チャンスは誰にでも等しくあるものだ。ただし、それに気付かないだけである」と。言い方を変えれば、「気付かない人にはチャンスはない」と言う事になるのかもしれません。

チャンスは一度
 いま、私は就任早々で「あわてている」と映るかもしれません。しかし、自分では今こそが町の飛躍のチャンスと思っているのです。この1,2年が正念場だとさえ思っています。来年のNHKの朝ドラのロケ地に中之条町がなる、と言うこともそのひとつです。この好機を逃したら、もうチャンスは来ないでしょう。そういえば、例の本にはこうも書いてありました。「チャンスに気付かなかった人に、再びチャンスが来ることはない」と。
 中之条町が飛躍するためのチャンスは一度、それが今だと思っています。中之条町に東京ディズニーランドはできませんが、交流人口を生かしたまちづくりという点では同じです。中之条町を田園観光エリアとして全国に情報発信できないかを、真剣に考えています。田舎の情緒・風情をいかした情感に訴えるところへ、行ってみたいと思いませんか?懐かしい田舎の風景に憧れる時代が来ると思いませんか?私はこれからの時代の方向性をそのように考えております。

(広報『群馬自治』平成16年10月号掲載)