貸 し 借 り の 原 則

吉岡町  堤   壽 登

およそ今から40年前、私の人生に大きく関わる人とめぐり合い、そして、教えて頂いたのが、貸し借りの原則でした。
 最初の頃は単純に、金銭的な貸し借りを想定していましたが、大きな間違いに気づいたのはその後です。ある時私は、大学ノート一冊に纏め上げた文章を、読んで欲しいと手渡されました。分厚いノートだったので正直、少し気が重かったのですが、夜必ず就寝前に読むようにして、しばらくは毎日の日課としていました。その時に初めて、貸し借りの原則の本当の意味が理解できたのです。
 私には91歳になる母親がいますが、年老いた姿を見ていて、日増しに強く思う事は、大変な生活の中での子育てを受けた、いわゆる親の恩である事に改めて気付きます。親の恩は山よりも高く、海よりも深し、といわれますが、子供達にとって一番大きな借りは、親に生み育ててもらった事への感謝の気持ち以外、何者でも有りません。

 最近卒業式等に出席し、仰げば尊しの別れの歌を聴く度に、或いは、子供たちが時々孫を連れてきて、あれやこれやと面倒を見ている様子を見る度に、極自然なことですが、何か人間愛や、人と人との結びつきを強く感じますし、先輩・後輩の関係、同僚や友人の関係、助け合いの精神である、向う三軒両隣の付き合い等が、どれもこれも皆、貸し借りの原則の中で作用しているように思えてなりません。
 吉岡町も自治会制度に移行してから1年半、自治会の趣旨は勿論、自己責任・自己決定による、会の運営そのものでありますが、これらを一口でまとめれば、茨城県東海村での先進地研修で学んだ「自治会とは、昔からあった良さを取り戻すことにある」という事に尽きると思います。
 現代社会において、いつしか欠除してしまった部分を復活させる事こそが、本来あるべき世の姿ではないかと、思う日々であります。
(広報『群馬自治』平成22年1月号掲載)