心の扉・自然の移ろい

 

板 倉 町  根 岸  一 仁

季節らしい天候が続けば、世の中の景気は良くなると言われている。それを証明するかのように、この夏はビール類や清涼飲料水、家電商品が好調な売れ行きで、経済界にちょっとした「潤い」をもたらしたようであった。
 それにしても今年の夏は本当に暑かった。私の住む板倉町は、全国一気温が高いと言われる館林市と隣接しており、ご多分に漏れず気温が40度を何度か超えたことがあった。もう、こうなると「暑い」ではなく「熱い」という表現がぴったりである。
 今年は梅雨も短く、季節が半月から一ヶ月ほど前倒しにやって来たよう感じだった。春夏秋冬、季節は一遍に変わるものではないことぐらい誰でもよく知っている。だが、いったい何を見てそのことに気づくかといえば、既に穂の出てしまったススキや、田んぼのあぜ道に真っ赤な花を咲かせてしまった曼珠沙華など、ほとんどの場合、季節の移り変わった後である。

 そんな日常性を覆したのが今年の夏だったように思う。身を刺すような日昼の陽とともにスジ雲やイワシ雲が天高く広がり、低空は真夏、上空は秋の世界を作っていた。そして夕方には夕焼け空が一面に広がる。こんな夏の光景が今までにあっただろうか。
 喧騒的な生活は田舎であろうが都会であろうが、その垣根を乗り越え始めている。経済界や政界、自治体そしてスポーツ界まで、その枠組みは実に流動的である。これから目まぐるしい変化が起こるかも知れないが、せめて心の扉は空に向け、自然の移ろいを感じ取れる余裕を持ち続けたいと願っている。
 私のように田舎に住んでいようと、東京のように大都会に住んでいようと、見上げる空は一つである。同じ空の下、みなさんの頭上には今、どんな光景が広がっているだろうか。

(広報『群馬自治』平成16年10月号掲載)