国 宝 化 に 向 け て

吉 井 町 長谷川 義明

本年1月号の群馬自治コラムに、『上毛かるた』に詠まれた場所を家族で訪ねるという「群馬探し」に関する記事が載っていた。ほのぼのとした家族の温もりが伝わってくる「群馬探し」のきっかけとなったのが、吉井町にある「多胡碑」だという。その「多胡碑」を吉井町は今、群馬県で最初の国宝にしたいと取り組んでいる。
 「むかしを語る 多胡の古碑」と『上毛かるた』に詠まれる「多胡碑」は、那須国造碑(国宝=栃木県)・多賀城碑(宮城県)と並んで日本三古碑のひとつに数えられている国指定の特別史跡である。奈良時代初期の和銅4(711)年に、周辺三郡の一部を割いて(合併して)、新しく多胡郡が誕生したときの建郡の碑で、『続日本紀』にも記録されている。
 また、「多胡碑」は歴史的な価値とともに、碑文の文字が「書」としても名声を博しており、国内はもとより中国楷書大字典「楷法溯
源」にも、碑文80字中39字が手本として採択されるなど、中国では書の名品として通用している。

 そこで、町では「多胡碑」が書跡の面で「国宝」としての資格を充分備えていると考え、昨年12月に池田 温 東京大学名誉教授をはじめ、書跡・古文書等の研究に関しては、日本の第一人者である先生方に参画していただき「多胡碑国宝化研究委員会」を発足させると同時に、国宝化に向けた研究の第一歩を踏み出した。
 昨今、合併の論議が高まり、吉井町もこのまま存続するかわからないが、多胡碑がこの地にあるかぎり、仮に町名がなくなったとしても、吉井町の原点を記した歴史的・学術的な意義(価値)は永久に消えることはない。
 過去1,300年にわたり先人達が宝物として守ってきた多胡碑が、名実ともに国宝として後世に受け継がれることを願わずにはいられない。
(広報『群馬自治』平成15年4月号掲載)