真 の 国 際 化 と は

大 泉 町   太  田   吉  易

 「この闇の下にアマゾンが眠っているのだろうか。遂に地球の裏側に来てしまった―。」成田を発って20時間あまり、ブラジルに向かう飛行機の中、窓外の深い闇をみつめながら、私は静かにこう思った。
 平成2年の入管法の改正以降、慢性的な労働力不足に悩んでいた企業城下町のわが大泉町に、南米日系人が急増し始めた。私達は、こうした状況を踏まえて、南米の現状視察と姉妹都市提携をすすめるために渡伯した。
 その帰路、リマ空港での出来事である。茶封筒を手にした50人程の日系人の集団が、飛行機の出発を待っていた。聞けば、たった一通のその封筒を頼りに、日本に働きに行くのだと言う。どの顔も不安に満ちていた。タラップに向かう途中、思わぬ光景に出くわした。先程の日系人の家族と思われる一団が、迫り来る夕闇の中、彼らを見送りに来ていた。妻の顔もあり、子どもの顔もあった。父の顔も母の顔も、どの顔もどの顔もみな、涙をためて、いつま
でも手を振っていた―。

 現在、大泉町には、総人口の12パーセント、5,000人を超える外国人が暮らしている。町では、全小・中学校に「日本語学級」を開設し、ポルトガル語の広報紙を発行し、外国人の国保加入を認めるなど、彼らとの共生の道を模索し、さまざまな施策を実施してきた。しかし、一方で、その共生に異を唱える声のあることもまた事実である。
 ボーダレスの時代と言われるが、果たして真の国際化とは、共生とは何であろうか。それを考える時、私はリマ空港での光景を思い出す。遠い外国へ旅立つ者と、それを見送る家族、家族を思う気持ちに国境はない。「般若心経」は「色即是空」と説く。一切が「空」ならば、取るに足らないこだわりは捨て、差別も捨て、どこの人にも、誰の心の底にも流れる共通の感情、不易な「心」を念頭に、町づくりを考えたい。リマでの体験は、私にとって国際化の心を拓く貴重な第一歩となった。
(広報『群馬自治』平成12年4月号掲載)